『美に入り彩を穿つ』を許さない

プロデューサー各位、夢見りあむを巻き込んだお気持ち表明ご苦労様です。お陰でこんな素晴らしいオタク特有の陰鬱な人の揚げ足取り大会会場に出会いました。
そんなことはどうでもいい。僕は『美に入り彩を穿つ』という曲について話がしたい。総選挙とか終わった話はもういい。

初めこそ僕もこの曲好きでした。人気キャラによる和ロックが嫌いなオタクはいない。アップテンポな曲の方が個人的に好きだし和風モチーフも大好き、MVも文句なしの高クオリティー。譜面も暇にもならず殺意も湧かないギリギリの難易度。ソシャゲの収録曲としては一つの理想型。

じゃあなんで「好き」が過去形になったか。

原因はただ一つ、男だ。

僕には彼氏がいる。言ってしまえば典型的な童貞クソオタク。性格は至って穏和で僕とは真逆。互いに別れる気は更々ない、多分。
彼にとって担当は日々の活力で推しは生きる糧。僕も人のことが言えないクソオタクだからそれを是としてる。幸せそうで何より。課金も同人誌もグッズもライブも好きにしてくれ、僕も思うままオタ活するから。ガチャ最高。
身分は学生同士、そろそろ就活がチラついてくる日々。現実見るの大嫌い甘ったれたドクズな僕を傍目に、ある日彼は「京都で働きたい」と仰るではないですか。南関東住みの我々には少々遠方。
理由を聞くと
「俺は美彩が好き。そして羽衣小町が好き。特に塩見周子。」
「だから塩見周子の出身地である京都に行く。」

なるほど


ふざけるな


同じことを親友から告げられたら僕は心から応援するだろう。いや、親友でなくともよっぽど嫌いな奴でない限り応援する。ただ一人を除いては。
そのただ一人が君だ。
言ってしまうのは何だが僕は君にベタ惚れだ。君が僕以外のものになるのが嫌で僕も君以外のものになる気がないから付き合っているのだ。そうでなければ基本男が嫌いな僕が彼氏なんてつくるものか。それなのに他の女の元に行こうとしてるのだ。誰が応援できるか。
たった1曲によって一人の男の人生は掻き乱され、それにより一人の女が憎しみに燃えている。この構図を地獄と呼ばずして何と呼ぶ。
いっそ僕に刺さらない曲であってくれたなら潔く憎みきれたのに曲自体はストライクゾーン内角低めいっぱいを良コースで抉ってくる。
僕は小早川紗枝にも塩見周子にも敵わない。オタクだからこそよく知ってる。こちとらコミュ障陰キャ無気力メンヘラメンタル童貞ひねくれ拗らせ情緒不安定イキリオタクやぞ。あと声がかわいくない。顔もかわいくない。

画面の向こうのお前達は知らない。彼が本気で自分を追い込んでることを。彼の休日が次々潰れていることを。これで駄目だったら自分に価値は無いと本気で言っていることを。

僕は遠くに行こうとする彼が嫌だし彼を駆り立てた美に入り彩を穿つが嫌いだし何より素直に応援できない自分が嫌だ。
でも彼を責める気は毛頭無いし、僕は僕を正当化する為に自分を責めない。よって向ける先の見当たらない矛先をこの曲に突き立てよう。
これは私怨だ。これは逆恨みだ。
それが何だ。
嫌いなんて感情は所詮そんなものだ。


今日も僕は彼の人生を賭けた挑戦が失敗するよう願っている。
叶った曉には絶望しきった彼を抱きしめて一緒に死のうと囁きかけるんだ。

どうやって心中しようか





清水寺なんてどうだろう